フットジャムの科学 基本的な動き

クラッククライミング解決の重要キーワード「フットジャム」これを使いこなせるかどうかでクラッククライミングの登りは大きく左右します。

ただフットジャムと一言で言っても実際はフィンガーサイズからフィストを超えるサイズまで多様です。それらのサイズに対応するためには多様な技術が必要で、それを一つずつ分解して考えなければいけないのです。でもそのあたりをちゃんと書いている本とかWebページってなかなか無いんですよね。

そんな情報不足のフットジャムに私の知る限りで光を当ててみたいと思います!

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足がどこまで入るかが最初の勝負

フットジャムではクラックの内側に足を入れて、内側からクラックを押し広げる力でジャミングを成立させます。下の写真は私のクラック用シューズの厚みを測ったものですが、赤が中指第二関節のフィンガーサイズ(17mm)緑がシンハンド(29mm)青がハンドサイズ(41mm)です。

一目瞭然ですがハンドサイズより小さいサイズはシューズの先っぽしか入りません。クラック内に足が入らなければジャミングが出来ないので、ハンドサイズまでのフットジャムはつま先をいかにしてクラックにねじ込むかが最初の勝負になります。足がクラックの中に入って初めて内側からクラックを押し広げるようにしてジャミングを効める事ができるのです。

参考ページ→クラック用クライミングシューズの選び方

ただクラックのサイズが広くてフットジャムがきめやすいルートの場合、足の動きが制限されないようにあえて浅めにフットジャムをきめたりするのでそのあたりは臨機応変にどうぞ。あとフィストサイズより広くなってくると、ここには出てこない多彩な技術があるのですがそれは応用編なのでまた別の機会に書いていく予定です。

フットジャムの基本的な動き

このページでもジャミングには2種類の止め方があると書きましたが、フットジャムでも例にもれずボトミングで止めたり筋力を使って捻って止めたりと2種類のフットジャムに分けることができます。実際にはどちらかだけを使うことは困難で両方をミックスして使用するのですが概念として「2つの方法があるよ」とおぼえておくと理解すやすいのでボトミングと捻じりに分けて書いていきます。

フットジャムはクラックにいかに足をねじ込むかがポイントになるので、足が一番薄くなる方向とクラックの方向を一致させるのが大事になります。その方法には2通りあります。

一つは膝を外側に出してパンタグラフのように足を広げる方法で、立ち上がるにつれて自然に足がねじれて捻れてジャミングが成立します。これをここでは「捻じりのフットジャム」としましょう。

もう一つは股関節の外側に捻じってつま先を下に落としバレリーナのように爪先立つ方法で、楔のように決めることでジャミングが成立します。これを同じく「楔のフットジャム」とします。

左が捻じりのフットジャムの

捻じりのフットジャム

一般的にはフットジャムといえばこちらの方法を言うことが多いです。汎用性の高さなどを考えるとまずはこれの練習を始めるのがおすすめです。

基本的なやり方

・フットジャムをきめたい足のふくらはぎ内側を自分に向けるように足をあげます。

・そのまま足先を股間の方向に持ってくると自然に足の裏が垂直面と平行になります。

・左の写真のようにクラックに足を入れたらば右写真のように膝を上に持ってきて足先を捻ってジャミングします。
・足は基本的にクラックに対して直角に入れます。

コツはは足の小指側を下にして膝を外に広げるところで、これが甘いと足の裏が下を向いたままになってしまいクラックの奥まで足を入れることができません。足の裏がクラックと平行になるまで頑張って足を上げましょう。このときにもう一つ意識してほしいのは足の甲側をクラックにフィットさせることで、何も考えずにエッジなどに足の甲が当たると痛い思いをします。

また立ち込む時は膝のをまっすぐにすることが非常に重要で、外に開いたまま立ちこもうとすると力が外に逃げてしまいフットジャムが外れてしまいます。

最初のうちは内転筋が足りずに膝をまっすぐにするのが辛いこともあるのですが、膝をクラックの縁に引っ掛けるなどして膝の位置を意識しながら登るようにするといつの間にか上手にできるようになると思います。

長所

膝を外に広げて足の裏がクラックに沿うまで足を開くと必然的に足が高い位置(私の場合股間の下くらい)まで上がります。この状態でフットジャムをきめて立ち上がると1歩が非常に大きくなります。また捻じりの力でジャミングを決めるので前傾壁でも効きがよく、サイズが良ければルーフなどでもらくらくぶら下がることができます。

短所

足首の柔軟性によってはフットジャムに立ち込めない場合があります。特に足の甲までバッチリと入れた場合には足首を90°近く捻らなければいけないため辛い人が多くなる傾向があります。このような場合はつま先を下に下げたり、少しだけ浅めにフットジャムしたりすると楽になります。

また浅いクラックやフィンガーサイズだとねじり過ぎると弾かれやすいので「適度なねじり方」をコントロールしながら登りましょう。

楔のフットジャム

こちらはちょっとマイナーな決め方ですが、つま先を下に落としてバレリーナのように爪先立つイメージでジャミングを決めます。このフットジャムの特徴は足首のほぼ真上に立つことができるので非常に安定した体勢を作ることが出来ます。また足首のねじれをあまり使わずに股関節にねじれを逃してあげられるので体の硬い人にとってはありがたいところです。

またオープンブックなどで(膝を外に出せずに)捻じりのフットジャムが使えない~と悩んでる人はこちらのフットジャムを覚えましょう。楔のように上から下に力を加えられると非常に効きが良いので緩傾斜で使うと非常に安定します。

基本的なやり方

・フットジャムをきめたい足をちょっと前に出して爪先を90°外側に向けます。
・そのままつま先を伸ばしてバレリーナのように真っ直ぐに伸ばします。
・この状態でつま先を上からクラックに落とすイメージでジャミングをきめます。

写真のように踵を上げて膝をそれほど大きく曲げずに

こつはつま先から足首に至る三角形を楔のようにクラックに入れ込み、なるべく足先の真上に重心が来るようにすることです。

このジャミングは高い位置にきめられないので大きく進むのは苦手です。逆にその場に安定して立つのは得意なジャミングなのでプロテクションをとったりレストしたりするには有効です。またオープンブックで使用する場合、壁側の足を下にして楔のジャムをきめてポンピングすると楽だったりします。

長所

つま先を下げて足首の真下あたりでジャムを極めるので足首への負担が少なく安定感も高いです。また足首を捻る要素が少ないので細かいサイズで弾かれにくく、ジャミングの効き具合が足首の柔軟性に左右されにくいなどの特徴もあります。

短所

足を上から下に押し込んでいるだけなので前傾が強くなるとそのまますっぽ抜けてしまいます。また足首を高く上げることが困難な(体の柔軟性による)ので1歩が小さくなります。

実際にはミックスして使います

ここではフットジャムを楔と捻じりに分けて考えていますが、実際にはグラデーションのように混じり合って使うことが殆どです。上に書いた長所と短所をどの様なバランスで配合するかがルート攻略の肝になる場合もあります。

フットジャムはジャミングを決めた足にしっかりと立ち込んで 体を進行方向に押し上げるのが基本になります。なので「ジャムポイント→足首→膝→腰」のラインが進行方向に揃うのが理想的です。

足首の柔軟性には人それぞれ限界が違うので、捻じりのフットジャムだけでまっすぐ立ち込める人もいれば、途中で誤魔化しながらつま先を下に落とさないと立ち込めない人もいるでしょう。大事なのは自分がどの程度の動きをこなせるのかを理解して、それに合わせてムーブを組み立てることです。

力のベクトルがずれてしまうとハンドジャムで引きつけなければいけなくなってしまいます。すべてが理想道理には行かないと思いますが、ズレ幅を一定以下に抑えられるように考えながら登ると省エネになって楽に登れるようになると思います。


徐々に足していく予定です、乞うご期待