ちょっと微妙な話

クリーンクライミングin小川山も無事に終わり、ひと段落したので、ボルトが抜けた問題でざわざわしていた事について。私は「岩場を守って後の世代までクライミングで楽しめる場を残したい」と言う地点に立って記事を書いていきたいと思います。

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訴訟を起こされた時点で敗北

今回の内容に関しては適当にググってもらうとして、大事なポイントは今回の諍いがクライマーコミュニティの外に持ち出されてしまったことに尽きると思います。

訴訟が起きた時点で特に行政を相手取った時点で、次からの行政によるクライミングコミュニティへの助力は絶望的になります。これは岩場を守るという意味では大きなマイナスで、クライミングエリアを守るためには絶対に避けなければいけない部分だと思うのです。

クライミングエリアの存続を考えた場合、クライミングエリアの使用可否や重要なルールを決めているのは地主や地権者そして地方自治体などの行政の方々で、それらの方々にクライマーはお願いするしかできないと言うことを私達クライマーは重々理解しなければいけません。

ローカルルールはクライミングコミュニティを守るためにある

ここに駐車するのはやめよう、夜9時を回ったら静かに、ここに入ってはいけません。チッピングはNGです、クラックの脇にボルトを打ってはいけません、オウンリスクでお願いしますetc etc

これらのローカルルールはクライミングエリアを守るために対外的に約束したものと、クライマー皆んなが円滑に楽しむためにあるものがありますが、基本的にはどちらもクライミングコミュニティを守るために存在しています。ときにはクライマーの行動を束縛するように感じるルールもありますが、それが結果的にクライミングエリアを守るためだったりコミュニティ内での不要な対立を防ぐ役割を果たしているものがほとんどです。

しかしローカルルールはあくまでもクライミングコミュニティ内だけに通用するものであり、そのローカル以外の人やローカルの一員であることをやめた(諦めた)人にはなんの意味もなくなってしまいます。

今回の問題では訴訟を起こした方にとってローカルルールやクライミングコミュニティとの関係よりも大事な何かを求めて訴訟を起こしたと思うのですが、その決断をする前になんとかならなかったのかなと思うわけです。

ADRという考え方

今回の訴訟は目に見えるものだけを見ると「請求額165万円」が原告の訴えになります。でもこの金額では満額もらえたとしても訴訟費用と弁護士費用など必要経費考えるとほとんど手元に残らない程度のものです。つまり目に見えるお金じゃない何かを求めて訴訟をしたと考えられるのですが、それを裁判官ではないクライマーコミュニティの誰かが埋めることができれば今回の訴訟は起きなかったと思います。

今回起きてしまったことはどうしようもないと思うのですが、次に似たような状況になった時、当人同士で話し合いがまとまらなかったときに突然訴訟ではなく、もう一段階話を聞けるような場や組織があったら理想的だと思うのです。そんな話を友人としていたらば、ADRという考え方を教えてもらいました。

ADR=裁判前紛争解決手段

その時は保険を例に話を聞いたのですが、概要としてはこんな感じの話でした。

保険金に対して不服がある場合に毎回訴訟を起こされると保険会社も被保険者も非常に高いコストを払うことになる。これを回避するために保険会社が共同でADRの組織を作り、保険会社とは独立した形で被保険者側に寄り添う立場で話を聞くことで訴訟になる前の段階で解決を目指す。

これと同じような感じの組織をクライミング版で、JFAやメーカーとかジム連合とかが上手くまとまって作ってくれたら理想的ですよね。

金の問題とか、そんな嫌な役を実際に誰がやるんだよとか、問題は山積で具体的になにかあるわけではないのですが、、、

具体的な話

夢見がちな話はおいておいて同じような場面になったときに私達は何ができるのでしょう?

今できることは今回の訴訟がどのような経緯で何を求めて起こされたかを冷静に判断して、自分だっただどのように訴訟を回避できるのかをお互いの立場で考えることだと思います。

なんだよそれだけかよ!って声が聞こえてきますが、今回の問題は簡単に解決するようなことではなく、粘り強く人の心と付き合って理解していくようなスタンスでいないと解決の糸口は見つからないと思うのです。

そして誹謗中傷や直情的な怒りはやっちゃいがちですが解決を遠ざけます。心を落ち着けて推移を見守るのが良いのではないかと思います。

行政や地権者がクライマーの立ち入り禁止や登攀禁止を決定するような事態にならないようにみんなで努力しましょう。

おまけ

今回の決着が和解ではなく裁判で判決が出た場合、ローカルルールをぶった切って判例としてボルト設置者の責任が明確にされる可能性があります。それが今後のクライミングや開拓にどのように影響するのか今は見えてきませんが、クライマー、特に開拓をする人は注視する必要があると思います。