ヌンチャクの選び方

  • 2022年7月21日
  • 2022年7月21日
  • その他

クラッククライミングでヌンチャク?と思うかもしれませんが、ナッツで使うしカムでも屈曲部では延長用につかったりと思ったよりたくさん出番があったりします。

あとcrackclimbing.netはクラッククライミングに特化したホームページですが、クラッククライマーだからといってフェイスを全く登らない人は少数派ですよね? このページではクラックでもフェイスでも共通で使いやすいように、どのような基準でどんなヌンチャクを選ぶと良いのかの要件をパーツごとに考えて書いていきたいと思います。

基本的なことですが、クライミングにおけるヌンチャクとはカラビナ2枚をスリングで連結したものを言います。ヌンチャクを揃えるときはカラビナとスリングをバラバラに買っても良いのですが、一般的にはセット物を買った方が手軽でお値段もお安めなのでおすすめです。

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ボルト側のカラビナ

最低限キーロックのもの

最近は右のカラビナのようなピンを使用したタイプはあまり見かけませんが、もしお店で見かけたとしてもお値段に負けてはいけません。必ずキーロックのものを購入しましょう。

理由はヌンチャクをクリップするときに、カラビナがギアスリングやボルトやナッツのワイヤーに引っかって、体力と精神力を非常に消耗するからです。ランナウトしているときにナッツワイヤーがカラビナに引っかかったりしたら・・・相当悲惨ですよね? こんなときに、カラビナを引っ張った拍子にナッツも外れて「ぴゅ〜」なんて悲しい事態が起きたりします、経験談です。

絶対キーロックにしておきましょうね!

ノーズ部分の角度がなだらかなもの

回収のときの事を考えて写真のように赤の部分がなだらかな物がおすすめです。ハングとかの回収ではここが屈曲してると回収が辛くなっちゃうのです。カムのテープからヌンチャクを外すときも楽ですよ。

選べるならカラビナノーズが細いもの

カムからヌンチャクで延長するときなど、スリングとかの少しの隙間にノーズを突っ込んだり、マルチの終了点などで雑多なスリングの隙間にクリップしたいときなど、ノーズが細いと便利です。

地上にいると当たり前にできることが、プルプルした状態だとできなくなっちゃうんですよ〜

ゲートの形状

これはストレートゲートやPETZLのアンジュのような1本ワイヤータイプの物を選択しましょう。

通常のワイヤーゲートはキーロックにならないのでそもそも選考基準に入ってこないのですが、引っかかり以外にも安全面で問題が出てきます。

ワイヤーゲートは回転したときに平行な2点でボルトなどに接触するため、ボルトの上などで安定しやすくなってしまいます。特にボルト上面に水平部分があるタイプ(昔の加工技術が未発達だった頃に打たれたケミカルアンカーなど)で外れる事例が報告されているのでボルト側のカラビナとして使ってはいけません。

またベントゲートはロープクリップ側の使用を想定していて、ボルト側で使用するとカラビナが意図せず外れる確率が上がるので使用してはいけません。

軽量化にこだわって必要以上に小型のカラビナにしない

古いルートやクラックルートでは支点に巻いてある太いロープを何本かまとめた状態で終了点としている場合が多いです。まとめてクリップしやすいように、ある程度の大きさも確保したほうがクラッククライミングでは有効な気がします。

スリング

柔らかくてちょっと長めがおすすめ

スリングが柔らかいほうが良い理由は、柔軟な方が力を逃がしてくれるからです。ロープの揺れがプロテクション(特にナッツ)に伝わりにくくなったり、ロープとゲートが干渉したときでも、スリングが柔軟であればカラビナが逃げてくれる可能性が高まります。

あとはあんまり良くない例えだけど逆クリップしたときとか、硬いスリングよりも安全性は高くなります。もちろん逆クリップしないのが一番なんだけどw

長めが良いのもロープの屈曲や揺れなどの力を逃してくれるからです。これは特にナッツでプロテクションを取りながら登る場合に有効で、ナッツを横に引っ張るような力が加わらないようにする為に長めのヌンチャクを使うことが多いです。

ただグラウンドフォールの心配がある場所では短めのヌンチャクも使うので、長め一辺倒だと困ってしまいます。長短取り混ぜて、長めをメインに短めも用意するのがおすすめです。

写真は私の持っているヌンチャクの構成で左から下記の本数を持っています。
短(11cm)×2
中(15cm)×9
長(30cm)×2 
アルパイン(60cm)×2

長はループタイプを使ってナッツとかのオポジションセットに対応しやすいようにしてます。

可能ならば長さ違いのスリングは、色も変えておくと登りながらすぐに判別できるのでおすすめです。

ロープ側のカラビナ

ワイヤーゲートがおすすめ

ワイヤーゲートカラビナの特徴はゲートが軽くウィッシュラップ現象が起きにくいことと、ロープの押しつけが2点で安定するのでクリップしやすいところです。また同種の通常タイプとワイヤータイプのカラビナを比べた場合、殆どのカラビナでメジャーアクシスの強度が通常のものよりも強いです。

ロープが2点でゲートに接するためクリップで横方向に力が逃げにくい

ワイヤーゲートに関してはは好みが分かれる部分もあるとは思いますが、私はクリップをしやすくウィッシュラップに強い事を勘案してワイヤーゲートを選択しています。

オープンゲート強度の強いもの

これもウィッシュラップ現象が起きてしまったときの安全性を考えてのことです。PETZLのテストによると落下係数0.3で「衝撃荷重 ≈ 4 kN」、落下係数1だと「衝撃荷重 ≈ 6 kN」かかるとのレポートがあります。ここからどの程度安全マージン取るかは人それぞれだと思いますが、大きい方の数値「6kN」から50%程度のマージンをとった9kN程度を確保するのが第一目標になるのではないかと思います。ちなみに生と死の分岐点では通常起こりうるフォールではオープンゲートの強度が10kNあれば耐えるとの記述があった気がします(うる覚え、今度ソース探しておきます)

オープンゲート10kNはなかなかないのですが、選択できる範囲の中でなるべくオープゲート強度の高いものを選べば安全性が増すので気にしてみましょう。

→ PETZL 実際の墜落における衝撃荷重

念の為オープンゲート強度の見方

カラビナの種類によって違いますが、赤矢印にあるようなマークがどこかに表記されてます。基本的に左から、メジャーアクシス(通常方向)マイナーアクシス(カラビナが横向いた状態)とオープンゲートのマークと3つの数字が並んでいます。私の使っているカラビナではメジャーアクシスで21kN、マイナーアクシスで7kN、オープンゲートで9kNの強度があると記載されています。軽量カラビナの割には強度が高めですね♪

それなりの大きさが必要

ロープをクリップする側のカラビナもボルト側と同じく、それなりの大きさがあったほうが扱いやすいです。クラック主体のルートではスポートルートほどしっかりと整備されていないことも多く、多様なロープワークを使う必要が出てきたりします。インクノットが無理なく作れる程度のサイズは確保しておきたいところです。

ゲートの形状

ロープ側のゲート形状はベントゲートとストレートゲートがあります。これにノーマルとワイヤーをかけ合わせた4種類+アンジュなど特殊形状がロープ側で選択できる主なゲート形状になります。

上でも書きましたが、ノーマルな丸棒よりも2本のワイヤーゲートの方が横方向に力が逃げにくいです。またストレートゲートに対してベントゲートは縦方向に力が逃げにくくなっていて、その両方を兼ね備えたのがワイヤーのベントゲートになります。

「じゃワイヤーのベントゲートがクリップしやすいし一番いいの?」

なんて思ってしまいますが確かにクリップはしやすのでしょうが、ロープも外れやすくなるのでそのあたりのトレードオフをどのように考えるかでどのカラビナを選ぶかが決まってきます。

私は安全性なども勘案して上でも書いたようにストレートのワイヤーゲートを使用しています。

その他のポイント

ゲート開閉の重さ

これは軽いほうがボルトクリップもロープクリップも楽なのですが、逆に言うと外れやすいとも言えるのである程度の硬さも必要ですよね。このあたりの強さはPETZLのExpressQuickDrawが秀逸なのでそれの硬さを見てみるのがおすすめです。

ゲートのクリアランス

整備が進んでいないルートを登る場合、カラビナがどのくらいの太さのものにクリップできるかは大事になってきます。

スリングがなくて致し方なく木の枝に直接クリップしたり、インクノットを2重に作ったりすることも多々あるので選べるならクリアランスは大きめな方が良いと思います。

まとめ

色々と書いてきましたが、実際に買う時は予算内に収まるキーロック+ワイヤーゲートのヌンチャクを並べて、ボルト側のカラビナの形状とロープ側カラビナのオープンゲート強度をチェックして振り落とす。

あとは残ったものの中でゲートの重さやクリアランスを調べて、好み(値段?)に合わせて選べばOKです♪