ビレイグローブのすすめ

私がビレイグローブを使うようになったのは2003年の秋のことでした、それにはきっかけがあります。

オンサイトトライで順調にロープを伸ばしていった友人、ギリギリのセクションを越えてクリップ体制に持っていった直後のことでした。

うぎゃ〜

核心を越えてクリップ体制に入った途端、なんと不意にたぐり落ちしたのです!!! 突然の衝撃で右手を持っていかれる私。気合でフォールを止めたものの、右手のお肉をビレイデバイスに挟まれて痛い思いをしたのでした。

この時代は素手でビレイするのが当たり前で、私も深く考えることもなく素手でビレイをしていました。でもよく考えてみると、ビレイって素手でやる必要が無いんですよね〜

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ビレイグローブを使う理由

現在私がビレイグローブを使用する理由は3つあって、安全面、怪我防止、指皮保護です。

安全面

ビレイを物理的な観点で定義してみると、クライマーの落下による運動エネルギーを摩擦抵抗や屈曲抵抗で熱エネルギーに置き換えてフォールを止める行為です。ビレイヤーの立場で簡単に言うと、フォール止めるとどこかが擦れて熱くなりますよって話なんですけど、人間の体は熱が発生するような強度の摩擦に堪えられ無いんですよね〜

自分がフォールしたりしたときに「アチチッ」なんて言いながらビレイヤーがロープから手を離したらショックでしょ? こんなときもビレイヤーがグローブをしていれば大丈夫! ビレイグローブが摩擦や熱を肩代わりしてくれるので、熱くな〜い♪ 痛みや熱さがなければしっかり握り込めるし、結果として制動力も上がってより安全なビレイができるようになります。

このあたりは摩擦が少ない細径ロープや昔の太径ロープ前提のデバイスを使用する場合に、顕著になってきます。

怪我防止

ビレイしているときの怪我で、ロープに引きずられて手の甲を地面や岩にぶつけたり引きずったりするパターンがあります。特にありがちなのが取り付きから離れ気味でビレイしているときに「クライマーがフォール→ビレイヤーが前にダイブ」と言うパターンです。

こういう場合はセルフビレイをしっかりセットしてビレイヤーが飛ばないようにするのが基本なんですけど、初めてのエリアなどでルートの全容がわからないときは完璧にすべてを想定するのは難しいですよね?

そんな感じで岩にダイブすると手の甲に打撲なり擦過傷を追うのですが、ビレイグローブをしているとこのあたりをかなり軽減してくれます。

指皮保護

指皮の保護に関しては手袋みたいに便利なものがあるのに わざわざ大事な指皮を削る必要ないですよね?

デメリットもあるよ

ここまでビレイグローブのおすすめ点をあげてきましたが全くデメリットがないわけではありません。

着脱に時間がかかる

シングルピッチのルートでは予め用意しておけばよいだけなのですが、マルチピッチだと悩ましい部分も出てきます。

マルチピッチでスピード重視するときはビレイグローブの着脱時間さえ惜しい場合もあります。殆どの場合はセカンドビレイをするときで、私の場合はグリグリ+支点ビレイを行って衝撃荷重がかからない前提で素手でビレイしてしまうことが多いです。

このあたりはビレイグローブのメリットとデメリットを勘案して、メリットが少なければ素手でも良いのではないかと判断する部分です。

ちなみにリードビレイのときはちゃんとグローブをします、殆どの場合でギアの受け渡し〜トップがギア整理している間にグローブをしちゃいます。

暑い時期は指先がふやける

汗かく時期はふやけます。ただ指皮が硬いほうが良いと考える人は悩ましいけど、私は柔らかくてもOKなタイプなのでそれほど困ってなかったりもします^^;

なので指皮が硬いほうが良いと考える人は甲メリの手袋など涼しめなものを選ぶと幸せになれる気がします。

テーピングやビレイグローブをしていると着脱しにくい

これだけはどうしようもないですね〜テープ無しで登るのは耐えられないので頑張ってグローブをはめています。

ビレイグローブと操作性

たまにビレイグローブを使用すると操作性が悪くなると言う人がいるのですが、実際どうなんでしょ? 少なくとも私が考えられる範囲ではビレイの操作性が劣るとは思いません。ビレイグローブによってやりにくくなるような細かい指の動きが実際のビレイで出てくるってのは考えにくいんです。

ただ私は指先が器用なタイプなので、不器用な人(失礼)はちょっと問題が出てくるのかも?

ただ素手でビレイをしているとロープを伝って来る細かい振動などの情報をキャッチしやすくなるので、そのあたりの情報量が少なくなるのは事実でしょう。ただその情報もロープが屈曲したりカンテをまたいだら簡単に消える程度のものなのでそこまで気にするようなものではない気がします。

どんなビレイグローブが良いのか?

ここまでビレイグローブのおすすめ理由を書いてきましたが、実際にどんなグローブ使うの?って 話になると意外と難しいんですよね〜

指の長さ、太さ、手の厚み、操作性、耐久性とお値段のバランス・・・人それぞれ違うから一概に「これ!」ってのはありませ ん。逆にこれはだめでしょと言う条件もあるのでそのあたりを忖度なしに列記しちゃいましょう。

だめな条件

指先のカットが適当

指先のカッティングが適当で、指先にフィットしないものがあります。操作性を考えるとこういうのは安くても買わないほうが幸せになれます。

指先がない

たまに指切りタイプの物を使用している人もいますが 私は指先までちゃんとあるタイプがおすすめです。 だってロープ握るときって指先も使うでしょ? 安全面でもそうですが、指皮の消耗を防ぐ観点で考えてもおすすめできません。

手にフィットすることが大事

手の形も人によって千差万別なので、ちゃんと手に合うものを選ぶと非常に使いやすく感じると思います。特に指先にあまりがあると非常に扱いにくくなるので、指先ピッタリサイズを選ぶのが良いと思います。

指の太さも問題で、あまりゆるいとビレイデバイスに巻き込まれることがあるのである程度のぴったり感は必要です。ただしあまりピチピチだとテーピングしたときにグローブを使えなくなってしまうのでそのあたりの匙加減が難しいところでしょうか・・・

天然皮革のグローブは使用していると、多少小さめでもだんだんと手に馴染んて変形してくれるので最終的にはそれで解決かなと。。。

指先の形状が良くて、サイズが適正だとロープを結んだり解いたりもそれほど問題なくできます。

ループ

ちゃんとしたビレイグローブはカラビナ用のループが空いていますが、安物は空いていません。グローブは手にフィットすることを優先させて、選んだグローブにループがない場合は自分でつけちゃいましょう♪

お値段と素材と耐久性

お値段はもちろん安いほうがいいですよね? でも安いだけで耐久性がないと困っちゃうしこの辺のバランスは下を読んで自分の好みに合わせてどうぞ。

iron調べビレイグローブ素材特徴一覧(個人の感想です)

お値段 羊革>牛革>豚革
耐久性 牛革>豚革>羊革 ※鞣し方や後加工の影響も受けるので絶対ではありません。
フィット感 羊革>豚革>牛革

牛革はお値段はリーズナブルで耐久性が高く長持ちです、コスパ最強。でも手に馴染むまでちょっと時間がかかるのと厚めのものが多いのでフィット感は鈍目です。

牛革のラ・クーガ

豚皮はその中間くらいでそこそこ柔らかく操作性は良いしそこそこ耐久性もあります。フィットンプロなどの定番商品が安く出回っているので、補給が楽なのも良いところです。

豚革のバインデット

羊革は非常にソフトでフィット感も高く、グローブを付けたまま登れるのでは?と思うほど手に馴染むのですが、耐久性が低くてあっという間に摩耗してしまいます。

羊革の手袋(ドライツーリングで使用中)

私はコスパ重視で牛革を選んでます♪

ビレイグローブを探すお店

色々と条件を書いてみましたが、これらを満たすグローブを売っている場所はホームセンターとかワークマンです!

作業手袋として色々な手のサイズの人が買いに来るので種類もサイズも豊富に揃っています。また手作業をすることを前提に作られているので、全体的に指先の感覚もよく、アウトドアメーカーが作っているビレイグローブよりも使いやすい印象です。

ちなみに私はワークマンで売っている「ラ・クーガ」というタイプの手袋を使用しているのですが、最近見ないんですよね〜廃盤になっちゃったのかな?

ビレイグローブはビレイデバイスの一部

旧iron日記で「手袋は大事なビレイデバイスだ!」って書いてからもう12年の歳月が経ちました。実際の岩場を見ているとビレイグローブを使用している人はその頃よりも増えて、だいたい半数くらいでしょうか?(ironの個人的感想です)

私もマルチピッチのフォロービレイなどではビレイグローブをしないことも多いし、すべてのパターンでビレイグローブが必要とは思いません。でもデバイスを持っていて使用するか否かをその場で選択するのと、持っていなくて選択できないのでは天と地ほど違うと思うのです。

選べるなら安全な方法を選ぶのが幸せになれる秘訣だと思いますよ〜♪