カムセットの方法

リードするために必要なカムセットについて、超基本的なことから実際のセット練習の仕方まで細かく書いていきます。

※ここで書いていることを中途半端に理解して実行するとクライミング中にカムが外れて大きな事故になる可能性があります。知識を得ることは大事ですが実際に行う時は熟練者と同行してカムセットの練習をすることをおすすめします。またこのページの情報をもとにクライミングを行い事故を起こしたとしてもironは一切責任を負いません。

説明書を読もう

まずはメーカーから出ている説明書を読んでみましょう、BDのはこれです。昔の説明書では50%~90%閉じた状態で使うように書いてありましたが、最近のはレンジが書いてあるだけです。
図を見るとかなり開き気味のセットまでOKにしているようですが、昔のカムに比べて何が変わったんでしょう?
工作精度?材料の剛性?もしかして安全マージンを削った???このあたりの詳細は不明ですがカタログによればここまでOKのようです。

確かにカムローブは対数螺旋でできていて、どの範囲が岩にあたっていても(どの開き具合でも)理屈では同じ効果が得られるはずなのです。しかし現実にはアクスル(軸)やカムローブのしなりの他に岩の結晶が砕けるなどでカムが開くことが多々あるので安全マージンも考えると通常は昔の説明書通りに50%〜90%程度の範囲で使用するのが良いのではないかと考えられます。

カムセットの基本

カムをカチャカチャといじってみるとわかりますが、トリガーを引くとカムローブが閉じたり開いたりします。

この1の状態でクラックにカムを差し込み、4の状態でカムがセットできれば理想的です。

では実際の手順を見てみましょう。

・カムセットする場所の目星をつけましょう
・カムをギアラックから外してトリガーを引きます
・カムローブの曲面がクラックにフィットするように差し込みます
・ステムはフォールしたときに引かれる方向をに向けます
・トリガーを放してカムが広がったときに安定しているかチェックします(このときに写真の4くらいだと理想的です)

カムの開き方

上の説明で50%〜90%とあっさりと書いていますがそれはどの様な感じなのかをもう一度写真で見てみましょう。

上の写真にある1は閉じきった100%の状態でカムローブの下辺が垂直になっています。
2は開ききった0%の状態でカムローブの下辺は水平になっています。

カムをセットする時の目安は初めはこの下辺部分が交わるAの角度を参考にしましょう。写真2の状態からトリガーを引いていくとAの角度がだんだんと狭まっていくのがわかります。ある程度狭まってAの角度が90°になったところが50%の開き具合です。

理屈でいうと各々のカムローブの角度は0%と100%の下辺を比べると90°違うので、2枚のカムローブの差は180°あることになります。それの半分(50%)は90°という話なのですが、そこは深く考えずにカムは「Aの角度が90°よりも狭くなるようなセットが安心」とおぼえておけばよいでしょう(写真3〜4)。

ここから更にカムを絞っていくと先端同士が触れ合うくらいの部分が出てきます(写真4)70〜80%程度絞ったところなのですが、私はこのあたりを理想としてセットしています。

カムはその特性上閉じ気味のほうが強度が高く、ずれたときの安全マージンもも高いのですがあまりにも閉じすぎると回収不能になってしまいます。なので(写真3)以上絞った状態でセットする必要があるときはちょっと注意してセットするようにしています。

セットする場所

セットはまず安定してクリップができる体勢を作れる場所が最低条件になります。
その上で下に書いたような条件をなるべく満たす場所を選びます。実際にはカムセットできる場所を選び放題なクラックもあれば、セットする場所がピンポイントに限られてしまうクラック(それが厳しいとPD表記されます)もあります。

・ジャムの邪魔にならない場所
・足でロープを引っ掛けにくい場所
・カムが歩かない場所
・岩の強度がしっかりしている所
・ロープの流れを邪魔しない所
・できれば回収しやすい所
・次のカムで落ちた時にも外れないような場所
・ランナウト具合も考えて

このページを読んで参考にするレベルの人はカムセットできる場所が選び放題なルートに取り付く可能性が高いので、カムセットする場所を選べる場合にどの順番でセットする場所を決めるか私なりの基準を書いてみたいと思います。

カムの説明書ではすべてのサイズにおいてパラレルの場所がベストと書いてありますが、私の場合はカムサイズによってセットする形状が微妙に違うことが多いのでサイズごとにセットする時の判断基準を書いて行きたいと思います。

ただし私がここで書く形状とはカムセットする上下方向に関しての話で、奥行き方向に関してはパラレルがベストです。

スモールカムの場合

フィンガーサイズの場合私はどちらかと言うとクラックが少し膨らんでいて上下が少し狭まっている場所にセットすることを好みます。

カムセットしたクラックの上下がすぼまっていると、上にはカムが歩きにくくなり、フォールしたときは下の窄まりがカムを受けてくれるのでセットの強度が上がるのがメリットです。

ただしこのこのような場所はジャミングで使いたい場所になることも多いので実際にセットする場合は手が通過した後、具体的には顔の目の前やそれ以下の場所でのセットが多くなります。またフットジャムで使いたい場所でもあるので、そのあたりもデメリットになります。

スモールカムは対応サイズが小さく、カムが歩いてしまったり、フォール時に結晶が砕けたりと、ちょっとしたアクシデントですっぽ抜ける可能性が高いサイズなので、安定性のメリットを優先してこのような形状にセットすることが多いです。

上の写真は実際のセット状況です、赤線の部分が凹んでいてそこにカムローブをセットしています。このセットのメリットは、あるかずに安定したセットになるのですがフォール方向とステムの方向が違った場合にカムの自由な動きを阻害する可能性もあります。この様なセットをする時はフォールの方向をよく考えてステムの向きを決定しましょう。

ミディアムサイズの場合

シンハンドサイズからフィストくらいまではカムの強度も安定感もあるので登りを優先して、ジャムで使わないような場所でなるべくパラレルな場所を探してセットすることが多いです。

シンハンドサイズではフィンガーサイズに引き続きクラックが膨らんでいるいる場所にセットしたくなるのですが、フィンガーサイズと違いシンハンドサイズはフットジャムがルート攻略の肝になることが多いのでそのような場所は避けることが多いです。

写真はシンハンドサイズでのセット例です、赤矢印の部分はフレアしていてフットジャムが決まりそうな場所、緑矢印はクラックが広がっていてハンドジャムもフットジャムも使いやすそうな場所です。これらの場所を避けてオフフィンガー部分にカムセットをしています。

ビックサイズの場合

ビックサイズの場合は対応幅が非常に広いのでクラックの形状が悪くてカムが外れることは殆どありません。なのでセットできる体制を作ることができればそこでセットするのが正解です。

カムをズラッシング(登るのと同時にカムを上に少しずつずらすこと)する場合は、クラックの奥め&高めにセットするとズラしやすく乗り越えるときも楽です。ズラッシングはいつの間にかカムの対応幅を超えてクラックが広くなっている場合があるので注意しましょう。

カムをセットする体勢

カムをセットする場合にはまずは体勢を安定させることが一番なのですが、それができたらば基本的にはジャムにぶら下がりながらジャミングした手の下あたりにカムをセットすることが多いです。ただ傾斜がなく足に乗れるような場合はジャミングした手よりも上にカムをセットする場合もあります。この辺りは傾斜やジャミングの効き具合によって判断するのがおすすめです。

また体勢がレイバック気味になるとセットに体力を使うのでなるべくぶら下がりながら行いたいのですが、限界グレードだと難しいですよね。TRなどでレイバックミックスでもカムセットができる体勢を確認したりしておくといざというときに役に立つと思います。

続く

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