カムの寿命と安全

  • 2021年2月28日
  • 2021年4月3日
  • カム

先日に引き続きカムについて書いていきます。今日は寿命と安全についてです。

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カムは消耗品

メーカーの説明書によれば、大きな衝撃荷重を受けて変形した場合は一発でNGになりますが、そのような衝撃を受けなかったとしてもカムの寿命はスリングや樹脂部分は10年以内、金属部分はかなり長い間と書かれています。ただ実際は金属部分であるカムローブやアクスル部分が交換時期に達することが多い気がします。

とくにエイリアンなど柔らかい金属をカムローブに使っているカムは寿命は短い傾向にあります、岩との馴染みは良いんですけどね。。。尖った性能だけど寿命が短いカムとそこそこの性能を長く維持できるカム、どちらを選んでも良いのですが、どちらにしても消耗品なので壊れたときに補充しやすいカムを選ぶのが良いと思います。

カムはサイズによって寿命が違う

メーカーの説明書ではカムサイズによって寿命についての記述が変わることは無いのですが、実際にはサイズによってかなり寿命が変わってきます。具体的にはスモールカムは寿命が短く、ビックサイズはそうそう壊れることはありません。

理由はカム自体の強度とフォールを受け止める頻度と程度の問題です。

強度に関してはスモールサイズは単純に構成部品が小さく強度が弱いです。ビックサイズのカム(キャメロットの#7とか#8とか)もカムローブのサイズに比して厚みや幅を大きくしにくく、ねじれの力に弱くなってしまうようです。

フォールに関してはサイズによって得手不得手が人によって違うのですが、基本的には体が入るようなワイドではドカ落ちをすることは珍しく、フィストサイズ以下のフォールでは体が空中に投げ出されるので衝撃荷重は比較的強めになります。

これらの理由でフィストサイズ以下の苦手サイズはどうしてもカムの寿命が短くなる傾向があります。

ちなみに私の場合はキャメロットの#0.3サイズと#0.5サイズの合計3本が今までにNGになっています。私にとって0.3は第一関節のフィンガーサイズ、0.5はオフフィンガーサイズなのでそんなものでしょう。。。

カムローブが削れる

ここからはカムが寿命を迎える例を幾つか書いていきたいと思います。最初はカムローブについて。

ここでも書きましたがカムの外周は対数螺旋を描いていて落下運動からうまく摩擦力を引き出してクライマーのフォールを止めています。

カムをセットする角度はある程度決まっているので、フォールが重なるとよく使う部分が集中的に削れてしまい対数螺旋が崩れてしまう事があります。

具体的には写真のようにセットすることを理想としてカムセットをしますが、その時に接地する緑の部分を中心にカムローブは削れていきます。カムローブが削れるとその部分だけ対数螺旋から外れてその前後でカムがスリップしやすくなります。

実際には必ずスリップするわけではないし、スリップしたとしても運が良ければクラックの中で再び摩擦力を回復して止まってくれることも考えられるのですが、よくチェックしてそのような状況にならないようにするほうが精神衛生上良いと思うのでカムはちゃんとチェックしましょう。

特に小さいカムはちょっとの削れただけでも比率的に影響が大きくなるので要注意です。

軸が歪む

カムの構造を分解してみてみると、岩に接するカムローブが4枚(3枚のものもある)とそれをつなぐアクスル、そしてステムとスリングになります。

クライマーがフォールしてカムに荷重がかかると(黄色矢印)カムローブが開くことで岩に固定されて応力が発生します(赤矢印)この2つの力をつないでいるのがアクスル(緑線)で両脇のカムローブとセンターのステムに掛かる力によってフォールの度に折れ曲がるような力が加わります。

基本的にアクスルとカムローブは直角にセットされているのでアクスルが曲がるとカムローブはハの字に開いて対数螺旋の並行が崩れていってしまいます。

どのくらい崩れるとどのくらい強度が落ちるのかのデータはありませんが、力学的にカムローブの回転方向が一致していないとカムがスッポ抜けやすくなることは間違いありません。

アクスルが歪むとトリガーを引いた時にカムローブがハの字になるので注意してチェックしましょう。

スリングがすり減る

私はスリングがだめになる場面があまり思う浮かばないのですが、周りでは何人かカムに付いてきたスリングがだめになったから自分で補修したという人を知っています。

これの修理ってロストアローとかではやってくれないんですよね。。。でも逆に言うとスリングがだめになるくらい使い込んだら全体的に寿命だからもう諦めたほうが良いというメーカー側の暗黙のアドバイスなのかもしれません。

その他

実は回収のときにハンマーをガンガン使ってしまい、カムローブやアクスルが変形する場合も散見されます。特に大きめハンマーを使っている人やそこら辺の石でガシガシ叩くような人は要注意です。

レアケースで一件だけ見たのですが、サムループ部分の樹脂パーツが壊れてしまった例も見ました。原因は不明ですがこのような場合は速やかに使用を中止するべきです。

サムループとスリングの接続に関してはカムの弱点になっている場合が多く、フォールによってスリングがワイヤーに引きちぎられるのを防ぐために各社色々と工夫をしています。キャメロットのスリングは不思議な形で縫われていますがこの弱点を補うために行われています。それらの工夫の一環である樹脂パーツが壊れている場合は速やかに新しいものと交換するべきでしょう。

続く

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