カムの基本とセット

  • 2021年2月24日
  • 2021年2月24日
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カムの基本的な部分を抑えた記事がないのでガッツリだけど簡容に書いてみました。

クライミングにおけるカムとは

英語での正式名称はSpring Loaded Camming Deviceです。直訳するとはバネ仕掛けのカム機構になるのですが、これではまだ意味がわかりませんよね。

そもそもカム(cam)とはどのようなものなのでしょうか?

機械的な話だと運動の方向を変える構造の機械全般をカム(cam)と言うのですが、クライミング的にはフォールという名の落下運動をカムの回転運動を経由して最後はクラックを押し広げるように突っ張り、その摩擦によりフォールの止める力に変える装置をカムと呼んでいます。ちなみにフォールしたエネルギーは最終的には熱エネルギーに変わります。

もうちょっと実際的に書くと、セットしたカムに荷重がかかると連続的にカムの幅が広がろうとする力(突っ張る力)が強くなる装置と言うことです。

カムの構成部品

①カムローブ 写真の赤やシルバーのパーツです、カムにより材質が違います
②アクスル カムの軸になります、カムローブとステムを連結しています。写真のキャメロットのように2本あるものをダブルアクスル(2軸)エイリアンのように1本のものはシングルアクスル(1軸)と言います。
③ステム アクスルとスリングをつなぐパーツです。これも日本語だと軸って話になりそうだけど本当は何ていうんでしょう?
④トリガー カムローブを絞るための引手です
⑤ワイヤー トリガーから伸びるトリガーケープルとかワイヤーをまとめてワイヤーと略しています(私だけ?)
⑥サムリングorテールピース 最近はサムリングが主流ですがマスターカムはテールピースタイプです、これによってカラビナの向く方向が変わってきます。
⑦スリング カラビナに連結するためのスリングです

対数螺旋

上記のフォールという直線的な運動を(中略)クラックを押し広げる力に変えるキーワードが「対数螺旋」という数学上の言葉になります。

この対数螺旋はカムローブの外周に使われていて、角度や計算式など色々とあるのですが、ここでは難しい数字を使わずにクライマーが知っておくべき概念だけ書いていきます。

クライミングに関係するカムにおける対数螺旋の特徴を列記します。

https://methodology.site/equiangular-spiral/より

中心点から伸ばした直線との角度は常に一定である

この特性によってカムローブがどの開き方でも保持力が一定に保たれます。ちなみに中心点を頂点に直角三角形を作った際にできる中心点の角度をカムアングルというのですがこれを知らなくても何の問題もありませんw

中心点からの距離が連続的に大きくなる

これはカムローブの外周はなめらかな曲線になっているということです。この対数螺旋の曲線が崩れているとカムがすっぽ抜ける可能性があるのでよくチェックしておきましょう。

カム外周の対数螺旋は平面である

カムの対数螺旋は平面で、効率よく働く方向は決まっています。具体的にはステムの方向にまっすぐ引っ張るのが一番効率がよいのですが、そこから外れると効率が落ちてカムがスッポ抜けやすくなります。

ただしクラックがパラレルな場合はカムが勝手に方向転換して効率の良い方向を向いてくれるのでそこまで厳密に考えなくてもOKです。

対数螺旋の数式とか詳しい話を知りたい場合はミキペディアさんのこのページがくわしいので興味のある人はどうぞ。

ここでは登るのに重要なことだけを書いて残りはすっ飛ばしていきますよ〜

回転と摩擦

クライマーが落ちたときにカムローブが緑矢印のように回転を始めれば、岩との接点Aを押し広げる力が強くなり最終的にクライマーのフォールをとめてくれます。

ただし一度「カムローブが回転を始めれば」カムの効果でAの地点の力が強くなり摩擦もどんどん増えるのですが、フォールした落下運動が回転運動に変わらずにそのまま直線的にスリップしてしまうことがあります。

これをカムのスッポ抜けというのですが、A地点でのカムと岩の摩擦力が少なくカムローブが回転するよりも少ない力で滑り始める場合にスッポ抜けは起きます。これはカムの種類と岩の種類や状態によるのですが、現実的には岩の状態が主要因になります。

具体的にスッポ抜けしやすい岩の状態を列記すると
・塩や砂がこびりついている(城ケ崎ではよくあります)
・ベルグラが張り付いている(シーズン初めの小川とか瑞牆ではよくあります)
・花崗岩の大きな結晶部分(結晶の表面は非常に摩擦が少ないのです)
・岩が柔らかく削れて滑る(凝灰岩や砂岩系でありがち)
・下開きのクラックにセットした(多少は大丈夫だけどやりすぎはだめ)

これ以外に多いのがカムの整備不良でカムローブの回転抵抗がある場合です。上でも書きましたがカムローブが回りやすいか滑りやすいかでスッポ抜けるかフォールをとめてくれるかの分岐点になるわけなので、整備不良で動きの悪くなったカムは当然スッポ抜けしやすくなります。

回転抵抗に関しては日々の手入れなので登るときにできることはありません。手入れのやり方に関しては後日書きたいと思います。

具体的なセットの仕方

基本的なセットの仕方に関してはクラックリードへの道に書いているのでこちらを読んでみてください。ここでは基本はサラッと書き流して応用編メインで書いていきます。

基本のキ

カムは50〜90%絞った状態でセットしましょう。理想はカムローブの先端が重なるくらいの開き具合です。

絞りすぎると(90%を超えるようだと)回収不能になりやすくなり、50%よりも開いた状態だとクラック内の結晶を砕いたときやアクスルのしなりなどで外れやすくなります。

セットする場所

・ジャムの邪魔にならない場所
・足でロープを引っ掛けにくい場所
・カムが歩かない場所
・岩の強度がしっかりしている所
・ロープの流れを邪魔しない所
・できれば回収しやすい所
・次のカムで落ちた時にも外れないようなセット
・ランナウト具合

これらの条件をなるべく満たす場所で安定したセットができる場所を選びます。実際にはカムセットできる場所を選び放題なクラックもあれば、ピンポイントでセットする場所が限られてしまうクラック(それが厳しいとPD表記されます)もあります。

これを読んで参考にする人はカムセットできる場所が選び放題なルートに取り付く可能性が高いので、カムセットする場所を選べる場合にどの順番でセットする場所を決めるか私なりの基準を書いてみたいと思います。

カムの説明書ではすべてのサイズにおいてパラレルの場所がベストと書いてありますが、私の場合カムサイズによってセットする形状が微妙に違うことが多いのでサイズごとに書いて行きたいと思います。

ただし私がここで書く形状とはカムセットする上下方向に関しての話で、奥行き方向に関してはパラレルがベストです。

スモールカムの場合

フィンガーサイズの場合私はどちらかと言うとクラックが少し膨らんでいて上下が少し狭まっている場所にセットすることを好みます。

カムセットしたクラックの上下がすぼまっていると、上にはカムが歩きにくくなり、フォールしたときは下の窄まりがカムを受けてくれるのでセットの強度が上がるのがメリットです。

ただしこのこのような場所はジャミングで使いたい場所になることも多いので実際にセットする場合は手が通過した後、具体的には顔の目の前やそれ以下の場所でのセットが多くなります。またフットジャムで使いたい場所でもあるので、そのあたりもデメリットになります。

スモールカムは対応サイズが小さく、カムが歩いてしまったり、フォール時に結晶が砕けたりと、ちょっとしたアクシデントですっぽ抜ける可能性が高いサイズなので、安定性のメリットを優先してこのような形状にセットすることが多いです。

ミディアムサイズの場合

シンハンドサイズからフィストくらいまではカムの強度も安定感もあるので登りを優先して、ジャムで使わないような場所でなるべくパラレルな場所を探してセットすることが多いです。

シンハンドサイズではフィンガーサイズに引き続きクラックが膨らんでいるいる場所にセットしたくなるのですが、フィンガーサイズと違いシンハンドサイズはフットジャムがルート攻略の肝になることが多いのでそのような場所は避けることが多いです。

ビックサイズの場合

ビックサイズの場合は対応幅が非常に広いのでクラックの形状が悪くてカムが外れることは殆どありません。なのでセットできる体制を作ることができればそのそこでセットするのが正解です。

カムをズラッシング(登るのと同時にカムを上に少しずつずらすこと)する場合は、いつの間にかカムの対応幅を超えてクラックが広くなっている場合があるので要注意です。


カムをセットする体勢

カムをセットする場合にはまずは体勢を安定させることが一番なのですが、それができたらば基本的にはジャムにぶら下がりながらジャミングした手の下あたりにカムをセットすることが多いです。

体勢がレイバック気味になるとセットに体力を使うのでなるべくぶら下がりながら行いたいのですが、限界グレードだと難しいですよね。TRなどでレイバックミックスでもカムセットができる体勢を確認したりしておくといざというときに役に立つと思います。

続く

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