クラック用クライミングシューズの選び方

クライミングシューズに悩み抜き、一部でシューズに魂を売り渡したと言われたironが語るクラッククライミング用シューズの選び方です。
クラック用のシューズで悩んでる人は参考にどうぞ。

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なぜクラック用のシューズなのか

クライミングシューズと言うとひとくくりになってしまいますが、フェイスクライミングではスタンスを拾うのが目的でクラックではフットジャムをきめるのが目的になります。

目的が違うので当然シューズに求める機能や形状が変わってきます。そこでフェイス用に対してクラック用のシューズという考え方が出てきます。

ただクラックルートと言ってもフットジャムを使わなければ登れないルートとスタンスを拾っても登れるルートがあり、スタンスを拾えるルートではフェイス用シューズを使っても十分に登ることができます。逆にフットジャムを使わないと登れないようなルートではクラック用のシューズを用意したほうが効率的に登れるようになるので、どちらかにこだわるのではなく自分の引き出しを増やすという形でクラック用シューズについて考えるとよいのではないでしょうか?

ちなみに私を含め特にクラッカーと呼ばれるような人たちは手足ジャミングで登ることを良しとする傾向が強いのでどんなルートでもクラック用のシューズを好む人が多い気がします。

どんなシューズがフットジャムしやすいの?

色々と遠回りをしながらクラック用シューズ選びの旅をしてきましたが、その結果見えてきたクラックで使うシューズのポイントは3つです!

・薄くてクラックに突っ込める(足趾は伸ばす)
・ジャムでねじれても足趾が逃げない
・エッジングやスメアリングが最低限はできる

現在ではこの3つを満たしたシューズでなるべくフェイスも登りやすいものを探してクラックシューズとしています。

なぜ足趾を伸ばして履くのか?

自分の手指と足趾を比べるとわかると思いますが足のほうが遥かに厚みがあります。私の場合で母趾と手のひら第三関節が同じくらいです。

そこにシューズの厚みが加わるとシューズの幅はあっという間にシンハンドサイズになってしまいます。

つまりフットジャムが効き始めるのは足趾を伸ばした状態でもシンハンドサイズからで、フェイス用シューズのように足趾を曲げた状態だとハンドサイズクラックにしか入りません。

またハンドサイズでクラックに足が入ったとしても足趾が曲がっているとフットジャムをしたときに足趾の屈曲点が岩に当たり痛みが出ることが多々あります。これを防ぐためにも足趾を伸ばして履くことは有効になります。

シューズは薄いほうがいい

日本の難しいクラックというのはオフフィンガーからシンハンドサイズに集中している傾向があるのですが、それらに対応するためにはシューズは薄ければ薄いほどフットジャムが効く範囲が広がって有利になります。

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足趾を伸ばしてシューズを履いたとき、赤い部分に遊びがあるとフィンガーサイズのフットジャムやスタンスを拾おうとした時に力が逃げてちゃんと立ち込めなくなってしまいます。そのときに伸びきった足趾を上から押さえつけて遊ばなくすると上でも薄いシューズを選ぶ必要があります。

ただし殆どのクライミングシューズは足趾を伸ばして履くことを想定していないので赤の部分に遊びができます。だからある程度で妥協する必要はあるかもしれません。

私はなるべく薄めのシューズを買ってそれでも残る隙間はアッパーラバーを押さえつけながら貼ることで解決してます。これはおまけにエッジング性能もアップするし痛みも減るのでので一石三鳥なのです。

足の裏の形とシューズのアウトラインをあわせる

iron理論によると、元々足の形とシューズの形がぴったり同じなんて事はほとんど無くて大体の人は足趾を適切に曲げることでシューズのアウトラインに足の形を合わせてます。
上に出てきた図の赤い部分の素材が伸びるようになっててそこで個人差を吸収するようになっているわけです。

ところがクラックシューズのように足趾を伸ばして履く場合この足趾を曲げてシューズのアウトラインに合わせられないので厳密に足の形とシューズの形を合わせる必要が出てきます。

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多少つま先に隙間があるけどだいたいぴったりのカタナレースと私の足型(緑)

多少のところは履いていればなんとかなるのですが、部分的に足趾が飛び出していたりするとその趾だけが曲がってジャムの時に激痛が走る原因になります。なるべくぴったりのものを買いましょう。

だいたいあってるシューズをある程度履いて馴染んだ頃にリソールするとさらにフィットしてきます。

つま先の形状と剛性

人間の足趾は大体の場合爪が地面と並行でつま先に向かって肉が爪に合流する形で上がっています。それを相殺する形で厚みがまさない程度に足趾を曲げたとしても真っ直ぐがいいところです。

これに対してつま先がシャープなシューズはつま先下がりなのでシューズに入れると当然隙間ができます。

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緑の丸の当たりにどうしても隙間が・・・

サイズを小さくして足趾を曲げて行くとぴったりとハマるのですがそうするとシューズ自体の厚みが増してしまって本末転倒。。。

私は今まで緑丸の隙間(エッジング性能)を妥協してフィンガージャムの性能を取るタイプだったのですが、ランドの柔軟性などを加味した上で直角に立ち上がるタイプのシューズもじつは使いやすいのかもしれません。
実際TC-Proはクラック用だけどランドが直角に立ち上がってるし・・・

このあたりはさらなる検証が必要ですが、自分の足にフィットしてなるべく薄いシューズを選ぶのが良いと思います。



===2020.04追記====

今まで私はつま先がシャープに尖っている方が細かいサイズにフットジャムを決めやすいと思っていました。つま先が丸いと細かいクラックから弾かれるようなイメージだったのですが最近リソールしたカタキが丸い形になって帰ってきて、それでフィンガージャムを試したらば思ったよりも登れて自分でもびっくりだったのです。

今回リソールしたカタキはランドも含めて全体的にしなやかだったので、実際にフットジャムを決める段でうまく変形してクラックに収まってくれたのでしょう。

悩んだらレースアップが無難

クライミングシューズは大量生産品だから大体の人になんとなくフィットするようには出来ていますが特定の個人にぴったりとハマることは殆どありません。

しかもクラック用のシューズとなると大きめを買う上にソールのアウトラインやつま先の厚みやらクライミングシューズの設計想定とは違うものを色々と求めてしまいます。

なので多少の誤差があっても紐を締め上げて足にフィットさせることができるレースアップを選ぶのが無難です。

ただし足を伸ばした状態でアウトラインから厚みまでぴったりと自分の足にフィットするシューズがある幸せな人はスリッパでも何でもいいはず、あ~羨ましいw

サイズ感

私の場合足の裏とシューズのソール側を合わせたときにだいたいおなじになるようなサイズを目安にしています。この状態だと実際にシューズを履いたときに気持ち趾が曲がるのですが、足全体の厚みはまさない程度におさまります。スタンスを拾うときだけではなくフィンガーサイズのクラックにフットジャムするときも緩すぎるとシューズの中で趾が逃げてジャミングが難しくなってしまうので、趾は伸びているけどシューズの中でつま先は詰まっている状態のサイズを選べると良いです。

私が愛用しているカタナレース基準だと、フェイス用のシューズは38hでクラック用は40を使用しています。

例外もあるよ

実はフィンガージャムだけのルートだとつま先しかクラックに入らないので足趾が曲がっていても全く影響ありません。

私の場合、明らかにつま先だけしか入らない細いクラックではフェイス用のシューズで登ることも多いです。

アダムとかイムジンとか蜘蛛糸とか・・・

でも純粋にジャム登りをしようと思ったらやっぱり薄いシューズのほうが登りやすいし、OSトライの場合にどういうシューズで登るかはなかなか悩ましい問題だったりします。